【選手向け】②脂質はどうエネルギーになる?|炭水化物との使い分け

脂質は低〜中強度の運動で多く使われる 栄養補給

こんにちは、ともひろです。

はじめに
前回は「脂質は体の材料でもある」という話をしました。今回は、その脂質がどうやってエネルギーに変わるのか、そして炭水化物とどう使い分けられているのかを見ていきます。

練習中、体の中では炭水化物と脂質の両方がエネルギーとして使われています。ただし、その割合は運動の強さによって変わります。この仕組みを知っておくと、「なぜ長い練習でもバテない人がいるのか」「なぜレース前は炭水化物なのか」がつながって理解できます。

この記事で分かること

  • 食べた脂質が体の中でどう運ばれるか
  • 脂質がエネルギーに変わるまでの流れ
  • 炭水化物と脂質の「使い分け」のルール
  • なぜ脂質だけではレースを泳ぎきれないのか

脂質がエネルギーになるまで|まず小さく分解される

食べ物に含まれる脂質の多くは「中性脂肪」という形をしています。そのままでは水に溶けず吸収できないので、体はまず胆汁で細かい粒に分け、リパーゼという消化酵素で分解します。

分解されたものは小腸から吸収され、再び中性脂肪に組み立て直されて、血液に乗って全身へ。使われなかった分は、脂肪組織に蓄えられます。これが「予備タンク」です。

ここまでに時間がかかるのが脂質の特徴。炭水化物が30分〜1時間で使える状態になるのに対して、脂質の消化には数時間かかります。練習やレースの直前に揚げ物を食べると重く感じるのは、このためです。

脂質は消化に時間がかかる。だから試合前や練習直前には向きません。逆に、時間に余裕のある食事では、しっかり摂って構いません。

ゆっくり泳ぐときは脂質が多く使われ、強度が上がると炭水化物が主役になる

脂質がエネルギーになるとき、酸素が必要

蓄えられた脂肪は、必要になると分解されて、筋肉の中の「ミトコンドリア」という場所でエネルギーに変えられます。このとき欠かせないのが酸素です。

つまり脂質は、酸素をたっぷり使える、ゆるやかな運動のときに多く使われるエネルギー源です。ウォーミングアップ、ゆっくりした有酸素のセット、長い距離を泳ぐとき。こういう場面で脂質は大活躍します。

一方で、全力に近いスピードで泳いでいるときは、酸素が追いつきません。そうなると体は、酸素が少なくても素早く使える炭水化物(グリコーゲン)に切り替えます。

(この時、脂質と炭水化物は同時に利用されますが、その割合が変化していきます。)

強度が上がるほど、炭水化物の出番になる

まとめると、こういう関係です。ゆっくり泳ぐ=脂質が多め、速く泳ぐ=炭水化物が多め。運動の強さが上がるほど、エネルギー源の主役は炭水化物にシフトしていきます。

ここが大事なところで、レースはまさに「速く泳ぐ」場面。だから、どれだけ体脂肪があっても、グリコーゲンが空っぽならレースでは力が出ません。

逆に、長い時間の練習では脂質がうまく使えると、グリコーゲンの節約になります。持久系のトレーニングを積むと、この「脂質を使う能力」自体が高まっていきます。

脂質と炭水化物は、どちらかを選ぶものではなく役割分担。日常の食事で脂質を切らさず、レース前は炭水化物を意識する。これが基本の形です。

「体脂肪を落としたいから炭水化物を抜く」の落とし穴

よく聞く考え方ですが、競技をしている選手には向きません。炭水化物を抜くと、速く泳ぐためのエネルギー源がなくなり、練習の質が落ちます。練習の質が落ちれば、結果的に消費するエネルギーも減ります。

それだけでなく、エネルギーが足りない状態が続くと、体はタンパク質(筋肉)もエネルギー源として使い始めます。減らしたくないものが減っていくという、いちばん避けたい状況です。

体脂肪を適正にしたいなら、食事を削るより先に、練習の中身と睡眠、そして食べる「内訳」を見直すほうが確実です。

炭水化物は約1時間、脂質は数時間かけて使える状態になる
ミニツール

脂質の「食べどき」チェッカー

同じ脂質でも、いつ食べるかで体の負担が変わります。タイミングと練習の強さを選んでみてください。

いつの食事?
その日の練習の強さ

今日からできる、小さな一歩

  • 練習・レース直前は、脂質の多い食事を避ける(揚げ物・こってり系は3〜4時間前まで)
  • ゆるい有酸素の日と、速く泳ぐ日で、食事の意識を変えてみる
  • レース前日〜当日は炭水化物中心。脂質は控えめに
  • ふだんの食事では脂質を抜かない。抜くとエネルギー全体が足りなくなる

この記事で分かったこと

  • 脂質は胆汁とリパーゼで分解され、吸収に数時間かかる
  • エネルギーに変わるときは酸素が必要。ゆるやかな運動で多く使われる
  • 強度が上がるほど、エネルギー源は炭水化物(グリコーゲン)にシフトする
  • レースで力を出すにはグリコーゲンが必須。体脂肪では代われない
  • 炭水化物と脂質は役割分担。どちらかを抜く発想は競技者に向かない

脂質はゆるやかな運動で長く使われるエネルギー源、炭水化物は強度が高いときに素早く使われるエネルギー源。この使い分けが分かると、食事のタイミングも自然に決まってきます。

📍 このシリーズの現在地
脂質シリーズ(選手向け):L1 基礎 → L2 しくみ【この記事】 → L3 摂り方の実践

次回予告
次回は「脂質の摂り方|量より“質”と“タイミング”」。どんな油を、どの場面で摂ると効果的なのかを、具体的な食べ物に落として整理します。

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参考文献・免責事項

・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」脂質の項
・国際スポーツ栄養学会(ISSN)ポジションスタンド/運動と栄養素の利用に関する知見
・スポーツ栄養学の専門教科書(脂質代謝・エネルギー供給系の章)

この情報は、一般的な栄養に関する知識に基づくものです。診断や治療を目的としたものではありません。体格・体調・種目によって必要な量は異なります。食物アレルギーや健康上の心配がある場合、また体重管理について不安がある時は、自己判断で食事を減らさず、保護者・指導者や医師にご相談ください。

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